会社でのランチタイム。近くのコンビニやスーパーでお弁当などを買ってきて、社内で食べてしまうことも多いんだけど、気分によっては少し会社から離れたいこともある。仕事で煮詰まっていたり、ずっとパソコンと睨めっこしていて画面を見たくなかったり、少し歩きながら録音したかったり。そんなとき、徒歩10分くらい歩いて、どこかのお店に行く。

ランチタイムは12時ちょうどから13時。きっかり1時間。けど、12時ジャストに会社を出ることはほとんどない。12時になったら、仕事にキリをつけて、ウーッと伸びをして、ドウスッカナーなんて考えてたら10分や15分くらい経っちゃうこともある。それでも、少し歩いて離れたい。そんなときこそ、離れたいときだったりする。

徒歩10分。往復20分を費やすと、意外に時間がない。先日もうっかり混んでいる店に入って、なかなか運ばれてこない料理を食べきったら、誰と競うわけでもなく競歩で会社に帰ることとなった。なので今回は、比較的すぐに料理が出てくるチェーン展開している牛丼屋に入ることにした。


全国的によく見かける牛丼チェーン店。まず食券機で購入してから席に座るのだが、最近、食券購入後のシステムが変わっている。以前は、席に座ると店員が水を運んで来ながら、無愛想に食券を半分ちぎって注文を確認し、戻っていく。それが、某ハンバーガーショップのように電光掲示板に番号が表示されたら自分で取りにいくようになっている。たしかに人と人の接触が少なくなるので合理的だ。店員の無駄な動きも少なくなっているし、店員の態度に心を動かされることもないので個人的にはこの変化は賛成だ。

そんな新型コロナウイルスの影響は、座る席にも見られる。テーブル上に間仕切りがあって、隣の席と隔てられている。一人ひとりのスペースが確保されているのだが、これがどれほど感染症の予防になるのか疑問を抱く。それでも強く反対するほどでもないので、素直に受け入れる。しかし、そんな対策も無効になりそうなほど店内は満席に近い。カウンター席っぽいところに1つ空きがあったので、そこに向かう。

ふと、間仕切りの異変に気付く。即席で設置されたプラスチックの間仕切りは、簡単に動く。隣の席との間に置かれた間仕切りの手前の部分が、私が座ろうとしている席にだいぶ傾いている。間仕切りの奥はちょうど中間にあるが、手前はだいぶ侵入してきている。駐車場だったら、駐車するのを諦めるくらいのナナメ具合だ。とはいえ、他に席が空いていないので、その場に座る。

こちらのスペースが減っている分、隣の席のスペースは増えている。そこで平然と食べている人がいる。思わず視界に入らないところで睨む。お前ちゃうんか?直せや。当然、視界に入っていないので、相手は平然と食べ続けている。それでも席に座り、仕切りを眺める私に気付いて、チラッとこちらを見る。しかし、ノーアクションだ。見て見ぬ振りだ。嘘でしょ?すみませんって言って直すんじゃないの?

こっちから直すのも躊躇う。なんかイヤラシイというか、おかしくはないんだけど負けた気分にもなるので、そのまま様子を見る。やはり、お隣さんはアクションを起こすつもりはないようだ。心の中で押し問答を続けているつもりだが、もしかしたら一人相撲をしているだけかもしれない。そのうち電光掲示板に自分の手の中にある食券の数字が表示された。仕方ない。一旦休戦だ。ひとり睨み合いを中断して取りにいく。


淡い、あわーい期待をしながらトレーを持って席に戻ってくるが、間仕切りの角度は1ミリも変わっていない。せっかくチャンスを与えたのに。この恩知らずが。こっちが席を立ったときに直しておいても良かろうが。

ふと、このスペースにトレー入る? 目測だとギリギリ。わざと時間をかけながら、少し隣の席に半身になりながら、ギリギリのスペースにトレーを押し込み、その後も窮屈に食べ始める。こうなったら意地だ。このまま食べてやる。チラッと食べにくそうなこちらを見たにも関わらず、ノーアクションの隣人に腹を立てながら牛丼を腹に収めていく。

当然、お隣さんの方が先に食べ終わり、トレーを返却に向かっていった。くそー。次の人が座る前に、食べながら肘でググーっと間仕切りを押し戻し、正常なスペースに戻したが、敗北感でいっぱいだった。


その数日後、違うセルフのうどん屋さんでは、もっと衝撃的な出来事が。やはりここも即席の間仕切りが置かれていて、一人ひとりのスペースが確保されている。うどんを食べていると、隣の席に人がやってきた。途端にパタリと間仕切りがこちらに倒れてきた。

うわっ。慌てて手で防御し、トレーから食事を守りつつ、押し戻すが安定していなため、なかなか間仕切りが立ってくれない。食事しながら苦労して戻している視界に、倒した張本人が座ってぼーっとこっちを見ている。ノーアクションだ。は?

なんとか立たせることができたが、そのあいだ中、ぼーっとした顔が視界に入っていた。こっちを見てるのに、何も手伝いもしなければ謝りもしない。どうなってしまったんだ日本。そんな国だったか?

悲しい出来事が続いたが、その次にナナメの間仕切りを見かけたとき、他の席もあったけど、ナナメの間仕切りで広くなった席に座って、間仕切りを正常な位置に戻しました。いや、これだよ。自分が動かしたわけでもないけど、戻すでしょ。ちゃんと隣人のことを考えようよ。

早く間仕切りがなくなる日が来ないかな。